売買契約実務のチェックポイント

手付金の解除と保全、取引前に押さえる基本

更新: 2026年8月9日監修: 小野 海士(宅地建物取引士・不動産実務15年)
手付金の解除と保全、取引前に押さえる基本

手付金を受ける場面では、解除できる時期、解除時に何を返すか、保全措置が要るかを分けて確認します。とくに売主が宅地建物取引業者として自ら売主となる売買では、手付解除と手付金等保全を契約成立前に確認することが出発点です。

この記事では、手付の記載をどこで確認し、重要事項説明書宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。に保全措置の概要をどう反映するかを、契約前の順番に沿って整理します。

アンちゃんアンちゃん売主が宅地建物取引業者として自ら売主となる契約で、手付が売買代金の20%を超えないか、契約書と重要事項説明書を並べて確認する場面です。手付解除の期限も先に入れていいんですか?

アンちゃんアンちゃん未完成物件なら5%かつ1,000万円以下、完成物件なら10%かつ1,000万円以下も見ますよね。解除の話と保全の話が混ざってしまいます。

ケンさんケンさんまず売主が自ら売主の宅地建物取引業者か、相手方も宅地建物取引業者かを切り分けるのが早いね。その後に、手付解除の条件と手付金等保全の要否を別々に確認しておくといい。

手付解除は「相手方の履行着手前」を確認する

買主が売主へ手付を交付した場合、買主は手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して契約を解除できます。ただし、解除できるのは解除する側ではなく、その相手方が契約の履行に着手する前です。これは手付による解除の方法と時期を定めたルールです(民法第557条第1項)。

履行の着手とは、外部から見ても分かる形で履行行為の一部を行うこと、または履行の提供に欠かせない前提行為を行うことです。履行期前でも履行の着手が認められる場合があり、行為の態様、債務の内容、履行期を定めた趣旨・目的などを踏まえて判断します。履行着手を一律の行為名だけで決めないことが重要です。

手付を解約手付として扱うかを確認するときは、まず契約書の手付に関する記載を見ます。そのうえで、売主が宅地建物取引業者として自ら売主となる売買なら、手付の性質を問わず、当事者の一方が履行に着手するまでは、買主は手付放棄、売主は倍額償還で解除できます。また、売主は売買代金の20%を超える手付を受領できません。これは自ら売主となる宅地建物取引業者の手付を制限するルールです(宅地建物取引業法第39条)。

一方、宅地建物取引業者相互間の取引には、手付解除を定める宅地建物取引業法第39条と、手付金等保全を定める同法第41条・第41条の2を含む一定の規定は適用されません。最初に取引当事者を確定する理由はここにあります。

契約成立前に進める手付金確認の6手順

1. 売主が宅地建物取引業者として自ら売主となるか、取引相手も宅地建物取引業者かを確認する
2. 契約書の手付に関する記載を確認し、買主の手付放棄と売主の倍額提供による解除の扱いを確認する
3. 相手方が外部から認識できる履行行為または不可欠な前提行為に着手したかを、個別事情で確認する
4. 未完成物件か完成物件かを区分し、受領予定の手付金等と既受領分の合計を売買代金と照合する
5. 保全措置が必要な場合は、保証委託、保証保険、または完成物件で利用できる寄託・質権方式を確認する
6. 契約成立までに、保全措置の概要を記載した書面を交付して買主へ説明する
自ら売主の手付解除期限は先に確認する
売主が宅地建物取引業者として自ら売主となる場合、履行着手前の買主に不利となる特約は無効です。履行着手前でも買主の手付解除を拒むことになる解除期限をあらかじめ設ける行為は問題とされています。解除期限の記載だけで結論を出さず、履行着手の有無と特約の内容を確認することが必要です。

アンちゃんアンちゃん保全は、未完成物件と完成物件を分けて、受領予定分と既受領分の合計で見ればいいんですね。重要事項説明書には保全方法の概要を書くんですか?

アンちゃんアンちゃん保証委託か保証保険か、保証機関の種類と名称・商号も説明する整理ですね。完成物件で寄託・質権方式なら、質権設定契約が必要なことも伝えるんですね。

ケンさんケンさんその順でいいね。保全が必要なのに保証・保険・寄託などの措置がなければ、買主は手付金等を支払わないことができる。anken.なら、登記簿や重要事項説明書などの書類をアップロードするとAIが読み取るし、案件情報を一度入力すれば重要事項説明書や売買契約書など約20種を連動して作成できるんだよ。

✅ 手付解除と手付金等保全の契約前チェックリスト

  • 売主が宅地建物取引業者として自ら売主となる取引か
  • 取引相手も宅地建物取引業者である取引か
  • 自ら売主の手付が売買代金の20%を超えていないか
  • 相手方の履行着手前かを個別事情で確認したか
  • 未完成物件か完成物件かを区分したか
  • 受領予定分と既受領分の合計を確認したか
  • 保全方法の概要を契約成立までに説明する準備があるか

まとめ:解除と保全は確認順を固定する

実務者として押さえるべきは、手付解除では相手方の履行着手前かを個別事情で確認し、買主は手付放棄、売主は倍額の現実の提供または倍額償還による解除という扱いを確認することです。自ら売主となる宅地建物取引業者の売買では、手付額の上限と、買主に不利となる特約にも注意します。

手付金等保全では、未完成物件・完成物件の区分、受領予定分と既受領分の合計、保全方法、契約成立までの書面交付と説明を順に確認します。保証委託か保証保険かを説明し、完成物件で寄託・質権方式を採る場合は、その契約の必要性も買主へ十分に説明します。

この確認作業は、anken. では登記簿をアップロードするとAIが読み取り、重要事項説明書の該当欄に自動入力されます。

出典: e-Gov法令検索国土交通省

参考(グラウンディング): 全日本不動産協会 重要事項説明書(売買編)解説書 / 全日本不動産協会 不動産売買契約書 条項例集(作成時点)

この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 宅地建物取引業法 / 定める宅地建物取引業法 / 定める同法

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小野 海士
代表取締役 / 宅地建物取引士
株式会社オッティモ・不動産実務15年。実務に基づき、宅地建物取引業法・関係法令に沿って監修しています。
監修元株式会社オッティモ
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