第一種低層住居専用地域とは?新人向けに調べ方と重説の書き方をやさしく解説
3行でまとめ
低い家が並ぶ、静かな住まいの環境を守る地域です。
建物の大きさや高さには、地域ごとの決まりがあります。
お店だけを使う建物は、建てられません。
お客さんにとって何が困るか
第一種低層住居専用地域は、低い住宅の良い住環境を守るための地域です。用途地域都市計画法に基づき、地域ごとに建てられる建物の種類や用途を定めた区分。住居系・商業系・工業系などがあり、建てられる建物が変わります。とは、建てられる建物の種類を地域ごとに決めた区分です。たとえば、静かな住宅街では住宅は建てられても、お店だけの建物は建てられません。
購入を考えるお客さんは、「家を建て替えられるか」「自宅で小さなお店をできるか」「増築するときにどこまで大きくできるか」を知りたいことがあります。ここで説明があいまいだと、買った後に思い描いていた建て方ができないと分かるおそれがあります。
重要事項説明書宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。(重説)は、契約がまとまるまでに宅地建物取引士が書面で説明する書類です。この地域では、用途地域だけで終わらせません。建蔽率敷地面積に対して建物を建てられる面積(建築面積)の割合。用途地域ごとに上限が決まっており、敷地いっぱいに建てられるわけではありません。は敷地に対して建物を置ける広さの割合です。容積率敷地面積に対する延べ床面積(各階の床面積の合計)の割合の上限。建物の総ボリュームを制限する指標です。は敷地に対する建物全体の床面積(建物の各階の、壁などで囲まれた部分の面積のこと)の割合です。どちらも、建てられる大きさに関わります。
さらに、外壁後退は建物の壁から敷地の境まで離す距離の決まりです。絶対高さは建物全体の高さの上限です。この地域でかかる斜線は2つです。道路斜線は、前の道路の日当たりや風通しを守るため、道路の近くほど建物の高さを抑える決まりです。北側斜線は、北どなりの日当たりを守るため、北の境目で5mの高さから斜めに高さを抑える決まりです。高さの上限があるため、隣地斜線(隣の土地の日当たりや風通しを守るため、隣との境目からの距離で高さを抑える決まり)はかかりません。日影は近くの土地にできる影の時間を抑える決まりです。調査した内容を、制限の概要(契約の前に買う人へ渡す説明の書類で、その土地にかかる法律の制限をまとめて書く欄のこと)として重説に整理します。
根拠:都市計画法第9条第1項、建築基準法第55条・第56条
アンちゃんお客様から「3階建てにできますか」と聞かれたら、第一種低層住居専用地域だから無理だと答えていいですか?
ケンさんその場では決めつけないほうがいい。高さの上限は10mか12mで、10mでも3階建てが建つことはある。ただ、北側の斜めの線や容積率で削られやすいから、市役所の都市計画の窓口で、その土地の数字を確かめるんだ。
アンちゃんお店だけの建物も、見た目が小さければ建てられそうに思ってしまいます。
ケンさん第一種低層住居専用地域では、お店だけの建物は建てられない。兼用住宅、つまり住まいの一部を仕事場にする家でも、事務所や小さなお店、塾みたいに仕事の種類が決まっているから、使い道を法律の表(別表第二)、つまり地域ごとに建てられる建物を並べた表と見比べるんだよ。
具体例
たとえば、売地を買ったお客さんが「日用品を売る小さなお店だけを建てたい」と話したとします。その土地が第一種低層住居専用地域なら、お店だけの建物は建てられません。建物が小さいことだけでは、判断を変えません。
住宅と仕事場を一緒にする建物は、事務所・店舗などを兼ねる住宅として認められる範囲があります。ただし、仕事の種類が決まっています。物件広告の印象や口頭説明だけで、「店もできる」と書かないことが大切です。建物全体を何に使うのかを聞き取り、建てられる建物の一覧と見比べます。
隣が第二種低層住居専用地域の場合は、日用品の販売を主な目的とする店舗などで、店舗部分の床面積の合計が150平方メートル以内、かつ3階以上をお店に使わない建物が認められる範囲があります。第一種低層住居専用地域と取り違えると、説明が逆になります。
「小さい店だから大丈夫」とは書かず、その土地の用途地域と建物の使い方をセットで調べます。
根拠:建築基準法第48条・別表第二、建築基準法施行令第130条の5の2
調べ方
調べる出発点は、その土地を市町村の都市計画図で確かめることです。都市計画図は、用途地域などを地図上で見られる図面です。まず住所を用意します。地番(法務局が土地ごとに付けた番号のこと。住所の番地とは違うことがあります)または住居表示(郵便が届く住所の表し方のこと)も手元に置き、地図上のその土地と用途地域の色分け・境界線を見比べます。
国土交通省の不動産情報ライブラリ(国が土地の情報を地図で見られるようにしたウェブサイト)でも都市計画情報を見られます。ただし、国の都市計画決定情報は参考情報です。地域の境界はおおよその位置で、実際の決定範囲とずれることがあります。重説に使う結論は、市役所の都市計画の窓口で確かめます。
窓口では、「この住所の用途地域を教えてください。指定建蔽率、指定容積率、外壁後退、高さ、日影の決まりも教えてください」と伝えます。都市計画図では用途地域名、指定建蔽率(都市計画でその土地に決められている建蔽率の上限のこと)、指定容積率(都市計画でその土地に決められている容積率の上限のこと)を見ます。窓口では、外壁後退の距離、高さの上限、道路斜線と北側斜線、日影について、その土地にかかる内容を聞き取ります。
容積率は、都市計画図の指定容積率だけを見て終わりません。前面道路は敷地が接する道路です。前面道路の幅が12メートル未満なら、道路の幅による容積率の上限もあります。都市計画による指定容積率と道路による上限を比べ、小さい方が上限になります。
根拠:建築基準法第52条・第54条・第56条の2
アンちゃん窓口では、「第一種低層住居専用地域ですか」とだけ聞けばいいですか?
ケンさんそれだけだと足りない。「この住所の用途地域を教えてください。指定建蔽率、指定容積率、外壁後退、高さ、日影の決まりも教えてください」と続けよう。
アンちゃん図面では、用途地域名と建蔽率・容積率を見るんですね。
ケンさんそのとおり。地図でその土地の位置を見比べてから、窓口の答えで確かめる。境界の近くなら、線のどちら側に入るかも聞くんだ。
自治体の図面と窓口で進める調査手順
✅ 用途地域を調べて書く前の確認項目
- その土地の住所と地番または住居表示が手元にあるか
- 市町村の都市計画図で、その土地の位置を見比べたか
- 用途地域名を第一種低層住居専用地域と読めたか
- 指定建蔽率と指定容積率を図面で読んだか
- 窓口で外壁後退と高さの内容を聞いたか
- 建物の使い方を、建てられる建物の一覧と見比べたか
重説の書き方の例文
重説では、用途地域欄に「第一種低層住居専用地域」と書き写します。次に、指定建蔽率と指定容積率を、自治体の都市計画図に表示された数値どおりに書き写します。図面の数値を見ずに、前の資料や広告の数値を写す書き方は避けます。
制限の概要には、建てられる建物の範囲と、建て方の決まりを分けて整理します。使い道の説明は、「住宅、アパート・マンション、診療所などが建てられる範囲。お店だけの建物は建てられない」のように、その土地に関係する結論を短く書きます。兼用住宅を扱うなら、仕事の種類が決まっていることも添えます。
建て方の説明は、調査できた内容をそのまま短く書きます。外壁後退があるなら壁から敷地の境まで離す距離を、高さの上限があるならその高さを記載します。斜線は、この地域では道路斜線と北側斜線の2つを書きます(隣地斜線はかかりません)。日影は、近くの土地への影の決まりとして整理します。
建蔽率が二つの区域にまたがる敷地では、区域ごとの敷地面積の割合で計算します。その土地が境界にかかるときは、図面上の見た目だけで書かず、窓口でその土地の扱いを聞いてから書きます。
根拠:宅地建物取引業法第35条宅地建物取引業法で、契約の前に買主・借主へ重要事項を書面で説明する義務を定めた条文。重要事項説明書(重説)の根拠となる規定です。第1項第2号、建築基準法第48条・第56条
重要事項説明書へ整理する書き方
| 書く場所 | 書く内容 | 書き方の例 |
|---|---|---|
| 用途地域欄 | 地域名 | 第一種低層住居専用地域 |
| 建蔽率・容積率欄 | 図面の指定数値 | 都市計画図の表示どおりに書き写す |
| 制限の概要 | 建物の使い道 | お店だけの建物は建てられない |
| 制限の概要 | 建て方 | 外壁後退・高さ・道路斜線と北側斜線・日影を整理する |
よくある失敗
よくある失敗は、国の地図で第一種低層住居専用地域らしいと見えた段階で、そのまま重説を書いてしまうことです。国の都市計画決定情報は参考情報であり、地域の範囲はおおよその位置です。用途地域の境界に近い土地では、地図上の見え方と実際の決定範囲がずれることがあります。
この失敗が起きる理由は、地図で用途地域名と数値まで見えるためです。しかし、重説では建築基準法に基づく制限の概要を説明します。用途地域の名前だけでなく、指定建蔽率・指定容積率、外壁後退、高さ、道路斜線と北側斜線、日影、建物の使い道を、調べた結果としてそろえます。
参考の地図は入口です。重説に書く内容は、市役所の都市計画の窓口で確かめた内容にします。
根拠:宅地建物取引業法第35条第1項第2号、宅地建物取引業法施行令第3条第1項
用語ミニ辞典
第一種低層住居専用地域は、低層住宅の良い住環境を守るための地域です。住宅のほか、アパート・マンション、診療所などが建てられる範囲があります。
用途地域は、建てられる建物の種類を地域ごとに決めた区分です。たとえば、住まいを中心に守る地域では、お店だけの建物に制限があります。
建蔽率:真上から見た建物の広さが、敷地の何割までかという決まり。たとえば100㎡の土地で建蔽率50%なら、真上から見て50㎡までです。
容積率:各階の広さを全部足した面積が、敷地の何割までかという決まり。たとえば100㎡の土地で容積率100%なら、1階50㎡と2階50㎡の家が建てられます。
道路斜線:前の道路の日当たりや風通しを守るため、道路の近くほど建物の高さを抑える決まり。
北側斜線:北どなりの日当たりを守るため、北の境目で5mの高さから斜めに高さを抑える決まり。
制限の概要は、重説で伝える建て方や建物の使い道の決まりを、調査結果にもとづいて短く整理した説明です。使い道、建蔽率、容積率、外壁後退、高さ、道路斜線と北側斜線、日影を分けて書くと読みやすくなります。
まとめると、第一種低層住居専用地域の重説は、市町村の都市計画図でその土地を確かめ、市役所の都市計画の窓口で建て方の決まりを聞き、用途地域欄と制限の概要へ分けて書く流れです。お店だけの建物は建てられない点も、建物の使い方に合わせて説明します。
出典: e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 官公庁(reinfolib.mlit.go.jp) / 官公庁(nlftp.mlit.go.jp)
参考(グラウンディング): 全日本不動産協会 重要事項説明書(売買編)解説書 / 全日本不動産協会 重要事項説明書補足資料(令和7年4月)(作成時点)
この記事で参照した法令(e-Gov法令検索): 都市計画法 / 宅地建物取引業法 / 宅地建物取引業法施行令 / 建築基準法 / 建築基準法施行令
