土砂災害警戒区域の重要事項説明、確認すべき基礎と実務
土砂災害のおそれがある区域は、物件の安全性を考えるうえで重要であり、重要事項説明宅建業者が契約前に、物件や取引条件の重要な事項を宅地建物取引士が書面で説明すること。買主・借主が不利益を受けないための手続きです。で確認・説明する対象です。宅建業者は、対象地が土砂災害警戒区域土砂災害のおそれがある区域として都道府県が指定した区域(通称イエローゾーン)。重説では区域内かどうかの説明が必要です。にあるかを取引時点の情報で確かめ、区域の種類に応じて開発・建築に関わる注意点も整理します。
この記事では、警戒区域と特別警戒区域の違い、指定図書等による照合、指定・解除・変更を確認する際の実務上の留意点を解説します。
アンちゃん重説で土砂災害の欄を確認するとき、ハザード情報を見れば終わり、というわけではないんですよね?
ケンさんそのとおり。まず大事なのは、対象地が土砂災害警戒区域内にあるかを確認することや。売買・交換・貸借のどれでも、区域内ならその旨が重要事項説明の対象になる。
アンちゃん警戒区域と特別警戒区域は、同じものとして説明してしまってはいけませんか?
ケンさん混同はあかん。どちらも土砂災害防止法による区域やけれど、制度が目指すことと、特別警戒区域で関係する開発・建築の規制が違う。まずは「警戒区域内か」を重説で確認し、そのうえで特別警戒区域かも切り分けるのが基本や。
警戒区域は「避難の備え」、特別警戒区域は「開発・建築の備え」も見る
土砂災害防止法は、土砂災害のおそれがある土地の区域を明らかにし、警戒避難体制の整備、一定の開発行為の制限、建築物の構造規制などを通じて、土砂災害防止対策を進めるための法律です。
土砂災害警戒区域は、急傾斜地の崩壊等により住民等の生命・身体に危害が生ずるおそれがあり、警戒避難体制を特に整備すべき土地として、都道府県知事が指定できる区域です。国土交通省は、危険を周知し、警戒避難体制を整える区域として整理しています。
土砂災害特別警戒区域土砂災害で建物が損壊し住民に危険が及ぶおそれが特に高い区域(通称レッドゾーン)。開発や建築の構造に規制がかかります。は、警戒区域のうち、建築物が損壊して住民等の生命・身体に著しい危害が生ずるおそれがある区域です。一定の開発行為を制限し、居室を有する建築物の構造を安全なものとするために、都道府県知事が指定できる仕組みです。
2つの区域を実務でどう見分けるか
| 区域 | 制度上の位置付け | 重説・調査で押さえること |
|---|---|---|
| 土砂災害警戒区域 | 危険の周知と警戒避難体制の整備を行う区域 | 対象宅地・建物が区域内にあるときは、その旨が重要事項説明の対象。売買・交換・貸借で確認する。 |
| 土砂災害特別警戒区域 | 警戒区域のうち、一定の開発行為の制限と、居室を有する建築物の構造規制を行う区域 | 警戒区域該当の確認に加え、特定開発行為の許可や、居室を有する建築物の構造に関する規制を確認する。 |
取引時点の区域指定を確認する流れ
特別警戒区域では、開発と建築の確認を一段深くする
特別警戒区域内で、予定建築物の用途が制限用途である特定開発行為をしようとする場合は、あらかじめ都道府県知事の許可が必要です。つまり、特別警戒区域内で一定の開発を予定する取引では、予定建築物の用途と、許可が必要となる開発行為かを確認します(特定開発行為の許可を定める仕組みが土砂災害防止法第10条第1項です)。
許可を受けた特定開発行為について、一定の変更をしようとする場合にも、都道府県知事の許可が必要です。売買・交換では、土砂災害防止法に基づく許可が、説明すべき法令上の制限として列挙されています。ここでは、許可の有無だけでなく、変更に関する許可の必要性も確認します(変更時の許可を求める仕組みが土砂災害防止法第17条第1項です)。
また、特別警戒区域内の居室を有する建築物は、想定される土砂災害の衝撃に対して安全となるよう、建築物の構造耐力に関する基準が定められる仕組みです。平たくいえば、人が居住する部屋がある建物を、想定される土砂の衝撃に耐えられる構造とする考え方です(土砂災害防止法第24条)。一定の特別警戒区域内では、建築確認・検査等に関する建築基準法の規定を適用する仕組みも定められています(土砂災害防止法第25条)。
区域は固定された情報と考えないことも重要です。都道府県は、指定その他の対策に必要な基礎調査をおおむね5年ごとに行うものとされています。特別警戒区域については、土砂災害防止工事の実施等により指定事由がなくなったと都道府県知事が認めるとき、指定を解除しなければならない仕組みです。指定・解除は随時行われ、国土数値情報に直ちに反映されるものではないため、過去に見た地図だけで判断せず、取引時点の最新情報を確認する必要があります。
アンちゃん区域の確認は、まず住所からハザードを調べて、それでも必ず最新の公示図書等で詰める、という流れですね。
ケンさんそうや。日々の調査の入口には、anken.も使えるで。住所から用途地域都市計画法に基づき、地域ごとに建てられる建物の種類や用途を定めた区分。住居系・商業系・工業系などがあり、建てられる建物が変わります。・ハザードを自動取得できて、対応データも拡大中や。
アンちゃん登記簿や路線価図、重説のような書類はどうするんですか?
ケンさんそれらはアップロードするとAIが読み取る仕組みや。案件情報を一度入力すれば、重説や売買契約書など約20種を自動作成・連動できる。とはいえ、土砂災害区域の最終確認は、今回のように都道府県の最新公示図書等で行う意識を持とう。
まとめ|区域の名称ではなく、取引時点の指定状況を確認する
まとめると、宅建業者として押さえるべきは、対象宅地・建物が土砂災害警戒区域内にあるかを確認し、該当する場合は売買・交換・貸借の重要事項説明でその旨を説明することです。特別警戒区域に該当する場合は、特定開発行為の許可と、居室を有する建築物の構造規制にも目を向けます。
照合の根拠は、国土数値情報ではなく、区域を指定した都道府県の最新の公示図書等です。指定のみならず、解除・変更の有無も取引時点で確認し、対象地の区域指定状況に沿って説明内容を整理しましょう。
出典: e-Gov法令検索 / 国土交通省 / 官公庁(nlftp.mlit.go.jp)
参考(グラウンディング): 全日本不動産協会 重要事項説明書(売買編)解説書 / 全日本不動産協会 重要事項説明書補足資料(令和7年4月)(作成時点)
